「耐震等級3です」――その等級、誰が、どの計算で確かめましたか?
注文住宅の打ち合わせで必ず出てくる「うちは耐震等級3だから地震に強い」。でも、等級1・2・3が具体的に何が違うのか、その強さを誰がどう確かめたのか、そして同じ「等級3」でも中身に差があることを、その場でスラスラ説明してくれる人は多くありません。さらに厄介なのが、「等級3」と「等級3″相当”」が実は別物だということ。
この記事は、奈良県で新築の全棟で構造計算(許容応力度計算)を行い、確認申請と住宅性能評価を自社で段取りする地元工務店の視点で、耐震等級1・2・3の違いを、数値・計算方法・”証明の仕方”まで踏み込んで解説します。結論から言えば――「等級3」という言葉より、「その等級を、どの計算で、誰が確かめたか」のほうが、はるかに大事です。
先に結論(1分で要点)
- 耐震等級=品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の「住宅性能表示制度」で定められた、地震への強さのものさし。等級1=建築基準法と同等/等級2=1.25倍/等級3=1.5倍の地震力に耐える。
- 【核心】同じ「等級3」でも、確かめ方(計算ルート)で根拠が違う。簡易な壁量計算の等級3か、一棟ごとに応力を追う許容応力度計算の等級3かで、確からしさは別物。
- 【最重要】「等級3」と「等級3相当」は違う。第三者の住宅性能評価書で証明されて初めて「等級3」。評価書なしに裸で「等級3」と言い切るのは、景品表示法上の優良誤認にもつながりかねない。
- 2025年(令和7年)4月の建築基準法改正で、多くの木造2階建ても構造関係の図書が確認申請の審査対象に(構造の”見える化”が進んだ)。
- だから選ぶときは「等級3ですか?」で止めず、「その等級は、許容応力度計算で確かめて、性能評価書で証明したものですか?」まで聞くのが正解。
01そもそも「耐震等級」とは何か(正確な定義)
耐震等級とは、建物が地震の力にどれだけ耐えられるかを等級(ランク)で表したものです。根拠は建築基準法そのものではなく、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律/平成11年法律第81号)にもとづく「住宅性能表示制度」です。住宅性能表示制度は、住宅の性能を10分野で共通のものさしで表示する国の制度で、その「構造の安定に関すること」という分野に「耐震等級」が置かれています。
- 耐震等級は、登録住宅性能評価機関という第三者が、共通のルールで評価して等級を付ける仕組み。
- 建築基準法が全建物に義務づける「最低ライン」とは別レイヤーの、“どれだけ上乗せして強くしたか”を表示するものさし。
- 「構造の安定」の評価には風・積雪・地盤・基礎なども含まれるが、いちばん注目されるのが地震に対する耐震等級(倒壊等防止)。
「耐震等級」は品確法の指標であって、建築基準法が直接「等級」で強さを定めているわけではありません。だから耐震等級を第三者に評価してもらうかどうかは、本来は任意です。等級を”名乗る”のは自由でも、第三者の評価書で”証明”されているかどうかは、まったく別の話――ここが後半の「等級3」と「等級3相当」の違いに効いてきます。
02耐震等級1・2・3の違い ― 数値で正確に
耐震等級(倒壊等防止)は1〜3の3段階。基準になるのは等級1で、これが建築基準法の耐震基準と同じ強さを意味します。
| 耐震等級 |
強さ(地震力の倍率) |
イメージ |
主な位置づけ |
| 等級1 |
建築基準法と同等(1.0倍) |
法律が求める最低ライン |
一般的な戸建ての標準 |
| 等級2 |
等級1の1.25倍 |
等級1より25%強い |
学校・避難所などで用いられる考え方に近い/長期優良住宅の要件(等級2以上) |
| 等級3 |
等級1の1.5倍 |
等級1より50%強い |
消防署・警察署など防災拠点で用いられる考え方に近い |
※住宅性能表示制度の耐震等級と、官庁施設・病院等に適用される耐震基準は別制度です。ここでは住宅性能表示制度上の倍率として整理しています。
等級1(=建築基準法レベル)が守るのは「命」
建築基準法は2つのレベルの地震を想定しています。
- 数十年に一度の稀な地震(中地震・震度5強程度)→ 損傷しないこと。
- 数百年に一度の極めて稀な地震(大地震・震度6強〜7相当)→ 倒壊・崩壊しないこと。
大事なのは、大地震に対して基準法が求めるのは「倒壊・崩壊しない」であって、「無傷」でも「住み続けられる」でもないこと。等級1は「一度の大地震で、中にいる人の命は守る(=逃げる時間を確保する)」ラインで、壁のひびや傾いて住めなくなることまでは防げるとは限りません。
等級2・等級3は「命」の先の「暮らし」を守りにいく
- 等級2は等級1の1.25倍の地震力を想定。学校や避難所など公共建築で用いられる考え方に近い水準です。長期優良住宅の認定でも耐震等級2以上(または同等)が求められます。
- 等級3は等級1の1.5倍。消防署・警察署・災害拠点病院など、大地震のあとも機能を保ちたい建物で用いられる考え方に近い水準です。戸建てで選べる最高等級で、一度の大地震のあとも住み続けられる可能性を高めることを目指すレベルです。
【なぜ等級3が注目されるのか】 2016年の熊本地震では震度7の揺れが立て続けに2回襲いました。建築基準法(等級1相当)が想定するのは「一度の大地震」なので、繰り返しの揺れは想定の外側です。益城町中心部の木造住宅の悉皆調査では、耐震等級3の木造住宅16棟のうち14棟が無被害、残る2棟も軽微または小破にとどまり、倒壊・崩壊はゼロと報告されています(国土交通省の委員会報告/日本建築学会の益城町悉皆調査)。ただし対象は16棟で、地盤条件・施工品質・建物形状によって結果は変わります。等級3は被害をゼロにする保証ではなく、倒壊・大破のリスクを大きく下げる有力な指標として見るのが正確です。それでも、「一度の大地震」を超える事態が現実に起きたときに差が出た――これが等級3が支持される実証的な理由のひとつです。
03【核心】同じ「等級3」でも中身が違う ― 計算ルートで根拠が変わる
「等級3です」と言われても、その等級を”どうやって確かめたか”は家によって違います。 木造住宅で耐震性を確かめる方法(計算ルート)は大きく3つあります。
| 計算ルート |
どんな計算か |
精度 |
主な対象 |
| ① 壁量計算(仕様規定) |
建築基準法が定める「必要な壁の量」を満たすかを床面積などから簡易に確認 |
簡易 |
従来、多くの木造2階建て |
| ② 性能表示計算 |
品確法の住宅性能表示制度にもとづく計算。壁量・接合部・床倍率・基礎などを等級ごとの基準でチェック |
中間 |
耐震等級2・3を表示する住宅 |
| ③ 許容応力度計算(構造計算) |
建物にかかる力を柱・梁・基礎など部材一本ずつまで追い、応力度が許容値以下かを確認 |
最も精緻 |
3階建て・大規模/こだわる工務店の2階建て |
木造2階建ての多くはこれまで①の壁量計算をベースに設計されてきました。壁量計算でも基準を割り増せば「等級3の壁量を満たしている」と示せます。一方、③の許容応力度計算は、地震・風・雪・自重といった力を柱・梁・接合部・基礎の一本一本まで数値で追いかけて確かめる、いちばん精緻な方法です。3階建てや大規模では義務ですが、木造2階建てでは義務ではありません。義務ではないからこそ、そこまでやるかどうかに、その会社の構造への姿勢が出ます。
「許容応力度計算」を分解する ― 許容・応力度・計算とは
言葉は難しそうでも、「許容」「応力度」「計算」の3つに分けると中身はシンプルです。
応力度=部材の内部に生じる、単位面積あたりの力。 建物に力がかかると柱や梁の内部に「内力」が発生します。この内力を断面の面積で割った値が応力度で、単位はN/mm²。内力には引っぱり・押し縮めの「軸力」、ずらそうとする「せん断力」、曲げようとする「曲げモーメント」の3種類があり、部材ごとに求めます。
許容=その材料が安全に耐えられる、力の限界値。 材料には壊れる限界の強さ(基準強度)があり、その基準強度を荷重の続く時間に応じた係数で安全側に低減して(考え方としては安全率で割る、または1未満の低減係数を掛けて)、破壊の限界より十分低いところに定めた”ここまでは許してよい”ラインが許容応力度です。しかも力のかかる時間で2段階に分かれ、常時かかる力に対する長期許容応力度と、地震・台風など一時的な力に対する短期許容応力度があります。
計算=「生じる応力度 ≦ 許容応力度」を、部材一本ずつ検定すること。 ①建物にかかる外力(固定荷重・積載荷重・積雪・風圧・地震力)を求め、②各部材に生じる応力度を計算し、③材料ごとの許容応力度を算定し、④実際に生じる力が許してよい限界を超えていないかを、柱・梁・接合部・基礎のすべてで確かめます。一箇所でも超えていれば、断面を大きくする・金物を足す・壁を配置し直すなどして全部材が許容内に収まるまで詰めます。
つまり許容応力度計算とは、「材料が安全に耐えられる限界を、実際に生じる力が超えないことを、部材ごとに数字で確かめきる」方法です。壁の量という一つのものさしで見る壁量計算に対し、こちらは力の流れそのものを部材まで追う。ここに、同じ「等級3」でも確からしさの差が生まれます。
私たち有限会社福井工務店が新築で全棟、許容応力度計算まで行うのは、「等級3という結果」だけでなく、「その等級を、力の流れまで追って裏づける」ことに意味があると考えているからです。
【設計者の本音】 「等級3です」と言うだけなら壁量計算でも言えてしまいます。でも、大きな窓や吹き抜け、スキップフロアといった間取りの自由を安全に成立させようとすると、壁の量だけを見る簡易計算では追いきれない力の流れが出てきます。許容応力度計算まで踏み込むと、”どこに、なぜ、その壁と金物が要るのか”が数字で見える。 だからデザインの自由と構造の安全を、勘ではなく計算で両立させられる。ここが、同じ「等級3」の中でも家の質を分ける分かれ目です。
04【最重要】「等級3」と「等級3相当」は別物 ― 評価書で証明するということ
計算で「等級3の基準を満たしている」ことと、それを第三者が公式に認めたこととは、まったく別の話です。ここがこの記事でいちばんお伝えしたい一線です。
「等級3」=第三者の性能評価書で証明された等級
耐震等級を第三者が確かめた証拠として最も明確なのは、登録住宅性能評価機関が交付する住宅性能評価書です。長期優良住宅の認定通知書やフラット35S(金利引き下げ)の適合証明書は、それぞれの制度の耐震性の要件に適合したことを示す書類で、「耐震等級3」がどう記載されるかは制度によって異なります。広告で「耐震等級3」と表示するときは、根拠書類に等級3(または同等の性能)がどう書かれているかを必ず確認する必要があります。ここではいちばん分かりやすい住宅性能評価書を例に説明します。評価書には2段階があります。
- 設計住宅性能評価:設計図書(図面・計算書)の段階で機関が等級を評価し、設計住宅性能評価書を交付する。
- 建設住宅性能評価:施工中〜完成の段階で検査員が現場検査を行い、設計どおりに施工されているかを確認して建設住宅性能評価書を交付する。
こうした公的な書類に「耐震等級3」と明記されて初めて、その家は正式に「等級3の家」です。第三者が、共通ルールで、図面と現場を見て確かめた――だから「等級3」と言い切れます。
「等級3相当」=計算上そう見込まれるが、評価書は取っていない
一方、性能評価書を取得せず、自社の計算上「等級3の基準を満たす」と見込まれるだけの場合、正しい表記は「等級3相当」です。この「相当」の二文字は逃げでも格下でもなく、事実を正確に言うための言葉。第三者の評価書という”証明”がない状態で「等級3」と裸で言い切ると、実際には証明されていない性能を証明済みのように見せることになりかねず、景品表示法の優良誤認にあたるおそれがあります。
【私たちが「相当」を大切にする理由】 福井工務店は、リフォーム・リノベーションの構造説明でもこの一線を厳格に守っています。木造リノベは既存の状態がすべて図面に残っているわけではなく、性能評価機関の認定が取れないケースが多い。だからリノベで等級3の水準に届く場合でも、認定という”証明”が取れない以上、正直に「耐震等級3相当」と表記します。「認定は取れません」と正直に言い切ることこそ、構造を数字で扱ってきた者の専門性のシグナルだと考えています。煽らず・逃げず・正確に。
だから、聞くべきは「等級」ではなく「証明」
| 表記 |
意味 |
確かめ方 |
| 耐震等級3(評価書あり) |
第三者機関が評価し、性能評価書で証明された等級 |
設計・建設住宅性能評価書の現物を見せてもらう |
| 耐震等級3相当(評価書なし) |
自社の計算上、等級3の基準を満たすと見込まれる |
どの計算(壁量計算か許容応力度計算か)で確かめたか聞く |
「うちは等級3です」と言われたら、「それは性能評価書が出ている等級3ですか? それとも計算上の相当ですか?」と一歩踏み込む。この問いに正直に・具体的に答えられる会社かどうかで、その会社の誠実さが分かります。
052025年4月の法改正で、構造の”見える化”が進んだ
耐震の話は、2025年(令和7年)4月1日に施行された建築基準法の改正とも直結します(2026-07時点)。
- これまで多くの木造2階建ては「4号建築物」に区分され、確認申請で構造関係の図書を審査しない「4号特例」の対象でした。設計者が構造を確かめていても、確認申請の場では構造図書のチェックが省略されていたのです。
- 2025年4月の改正で、この4号特例が縮小され、多くの木造2階建てが「新2号建築物」に再区分。構造関係の図書があらためて確認申請の審査対象になりました。あわせて原則すべての新築に省エネ基準への適合が義務化されています。
つまり、構造関係の図書が確認申請という公式の場でチェックされるようになったわけです。ただし、これは全ての木造2階建てに許容応力度計算が義務づけられたという意味ではありません(仕様規定で確認する場合と、許容応力度計算まで行う場合があります)。それでも、構造をどう扱っているかが表に出る方向へ進んだのは確かで、もともと構造を数字で詰めてきた工務店には追い風です。
この確認申請の中身や2025年改正の詳細は「建築確認申請とは?流れ・期間・費用」で条文まで掘り下げています。土地の段階からの法規制の読み方は「奈良で土地購入に失敗しない注意点」もあわせてどうぞ。
06耐震等級3にする価値と費用 ―「意味ない」は本当か
「耐震等級3 意味ない」と検索されることがあります。等級を上げるとコストが上がるため、「等級1で法律は満たすのに、そこまで要る?」という疑問です。両面から正直に書きます。
等級3の”価値”の側
- 繰り返しの揺れに強い:建築基準法(等級1相当)が想定するのは「一度の大地震」。熊本地震のような連続した震度7では、等級3の実証的な強さが報告されています。
- 地震保険料の割引:耐震等級に応じて割引(等級1=10%/等級2=30%/等級3=50%。2026-07時点。制度改定がありうるため加入時に確認)。等級3なら保険料が半額。
- 長期優良住宅・各種優遇との連動:等級3は長期優良住宅の認定を取りやすく、税制・住宅ローン・補助金で有利になる場面があります(要件・金額は年度で変わるため計画時点の最新情報で確認)。
- 資産価値・安心:構造が数字で裏づけられ、性能評価書という”証明書”が残る家は、住み手の安心にも将来の売却時の説明にもプラスに働きます。
等級3の”コスト・制約”の側(正直に)
- 建築費が上がる:耐力壁の量・接合金物・基礎を増強し、許容応力度計算や性能評価の取得にも費用がかかります(金額は規模・仕様で幅が大きく、案件ごとにお見積もりでお示しします)。
- 間取りに条件がつくことがある:「一面まるごと窓」のような極端な計画は、そのままでは等級3に届かないことも。ただし許容応力度計算まで行えば、”どこを強くすればその大開口が成立するか”を数字で設計できるので、諦める前に計算で解ける余地は大きい。
- 等級3は万能ではない:耐震等級は建物本体の強さの指標。地盤の良し悪し・地盤改良・施工品質が伴わなければ数字だけで安心はできません。土地の段階からの見極めが要ります。
私たちの立場
福井工務店は、新築では全棟で許容応力度計算を行い、その結果を性能評価で確かめることを標準にしています。「等級3という数字」を売りたいからではなく、大地震のあとも住み続けられる可能性を、勘ではなく計算で高めたいから。そのうえで「等級を上げるほど良い」と一律に押しつけることはせず、土地・予算・暮らし方を踏まえ、費用と安全が釣り合う最適点を計算根拠を持ってご提案します。
07自分の家(これから建てる家)の耐震等級を確認・証明する手順
- どの等級で設計するかを決める:「等級1/等級2/等級3」のどれを目指すかを設計者と決めます。長期優良住宅や地震保険割引を狙うなら目標等級が逆算で決まります。
- どの計算で確かめるかを確認する:その等級を「壁量計算」で満たすのか「許容応力度計算」まで行うのかを聞きます。同じ等級でも根拠の確からしさが変わるため、ここは必ず確認します。
- 性能評価を取得するか決める:登録住宅性能評価機関に依頼し、設計住宅性能評価(図面段階)→ 建設住宅性能評価(現場検査つき)を取得すれば、「等級3相当」ではなく証明された「等級3」になります。
- 評価書の現物を確認する:完成後、住宅性能評価書に記載された等級を自分の目で確かめます。これが口約束ではない”証明”です。
すでに建った家・中古住宅で耐震等級を知りたい場合は、住宅性能評価書・長期優良住宅の認定通知書・確認申請の構造図書が残っていないか探すのが早道です。書類が無い古い家は等級が「不明」なのが実情で、必要なら耐震診断で現状の耐震性を別途評価します。
08実例:福井工務店が構造をどう担保しているか
耐震等級の話は、私たち福井工務店にとっては日々の実務そのものです。どう構造を担保しているかを正直にお伝えします。
新築は、全棟で許容応力度計算を行っています。 壁の量だけを見る簡易計算ではなく、建物にかかる力を柱・梁・接合部・基礎まで追いかけて一棟ごとに構造を確かめる。そのうえで設計住宅性能評価を取得し、等級を第三者の評価書で証明できる形にしています。
この構造計算は、自社の一級建築士が責任者として統括し、木材をプレカット(工場で精密に加工)する専門会社と連携して進めます。構造計算とプレカットを同じ流れで組むことには、いくつもの実利があります。
- 計算どおりの材料が、そのまま現場に届く:計算する会社が木材を加工して出荷するので、机上の数字と、実際に組み上がる柱・梁・金物が当然一致します。「計算は立派でも現物の木材は別物」が起きません。
- 構造材の予算を常に把握できる:構造計算と木材の拾い出しが直結するので、どの部材にいくらかかるかが早い段階から見え、コスト管理に効きます。
- 中間コストを抑えられる:計算と加工が分断されないぶん、手戻りやムダな中間マージンが減ります。
- 納期が読みやすい:工場加工なので天候や職人の手待ちに左右されにくく、工程が平準化します。
- 代替案・VE案(コストと性能を両立させる工夫)ももらえる:「この納まりなら、この部材でこう組めば合理的」といった提案を受けられ、安全とコストの両立に効きます。
福井工務店は、この進め方を全棟で標準にしています。
さらに、耐震(強さで地震に耐える)に加えて制振(Kダンパー)を標準採用しています。制振は地震の揺れのエネルギーを吸収して建物の変形を抑える仕組みで、繰り返しの揺れによる構造体のダメージを軽減します。許容応力度計算で確かめた等級3の「強さ」に、揺れを「吸収」する制振を組み合わせる――これが福井の構造への向き合い方です。
ただし、制振ダンパーは「つければ効く」ものではありません。耐震等級1のように建物そのものの剛性が低く、固有周期の長い(=ゆっくり大きく揺れやすい)建物では、ダンパーを足しても効果は出にくいのです。効かせるには順番があります。まず許容応力度計算で架構(骨組み)をしっかり組んで建物の強さと硬さを確保し、そのうえで必要な場所に必要なだけダンパーを配置し、効かせどころで揺れを吸収させる。 制振は耐震の”上乗せ”であって”代わり”ではありません。土台となる架構の強さを整えて初めて、制振ダンパーは本来の力を発揮します。こうした耐震・制振への取り組みは、福井工務店の耐震・構造ページでも詳しくご紹介しています。
奈良で私たちがこの評価を取るときは、確認申請と設計住宅性能評価を同じ審査機関で一気通貫で進めます。別々の機関でバラバラに動かすより図書の整合が取りやすく、スケジュールもまとめて段取れる。設計・確認申請を自社で回している工務店だからできる進め方です。
- 木造3階建ての案件では、確認申請の対応と並行して性能評価の審査を進めています。木造3階建ては許容応力度計算が義務の領域で、まさに「力の流れを部材まで追う」設計が要る家です(取得する等級は、設計が固まったうえで評価機関の審査を経て確定します)。
- 平屋・2階建ての案件でも、設計から確認申請まで自社で段取り、全棟で許容応力度計算を行っています。「その等級を、どの計算で確かめたか」を、いつでも図面と計算根拠でお示しできる状態にしています。
福井の標準は、新築の全棟を、許容応力度計算で確かめた耐震等級3で設計すること。 「等級3」という数字を売り文句にするためではなく、力の流れを部材まで追って裏づけ、設計住宅性能評価で証明できる形にするためです。数字を見せられる家づくりを、その透明性ごとお届けします。
なお、耐震等級3や制振は、被害ゼロや地震後の継続居住を保証するものではありません。地盤・施工品質・地震の規模や周期・被災後の点検結果によって、住まいの状態は変わります。だからこそ私たちは、等級の数字だけでなく、土地・地盤から含めて総合的にご提案します。
09よくある質問(FAQ)
耐震等級は、必ず3にしないといけないのですか?
いいえ。法律上の最低ラインは等級1(建築基準法と同等)で、等級2・3にするかは任意です。ただし、大地震のあとも住み続けられる可能性を高めたい、地震保険を半額にしたい、長期優良住宅にしたい、という方には等級3をおすすめします。土地・予算・暮らし方を踏まえ、計算根拠を示してご提案します。
「耐震等級3」と「耐震等級3相当」は何が違うのですか?
「等級3」は、第三者の登録住宅性能評価機関が評価し、住宅性能評価書で証明された等級です。「等級3相当」は評価書を取得しておらず、自社の計算上そう見込まれる状態を指します。「相当」は事実を正確に言うための表記で、評価書がないのに「等級3」と裸で言い切るのは優良誤認のおそれがあります。証明されているかどうかを評価書の現物で確認してください。
同じ「等級3」でも中身が違うと聞きました。本当ですか?
本当です。簡易な壁量計算で壁の量を満たしただけの等級3と、許容応力度計算で建物の力の流れを部材まで追って確かめた等級3とでは、確からしさが違います。福井工務店は新築で全棟、許容応力度計算まで行っています。「その等級はどの計算で確かめましたか」と聞くのがおすすめです。
耐震等級3は「意味ない」という意見も見ますが?
建築基準法(等級1相当)は「一度の大地震で命を守る」ラインで、繰り返しの揺れは想定の外です。2016年の熊本地震では震度7が2回続き、益城町の調査では耐震等級3の木造住宅(16棟)の多くが無被害〜軽微な損傷にとどまったと報告されています(サンプルは限られ、地盤・施工品質でも結果は変わります)。地震保険料も等級3で50%割引(2026-07時点)。一方で建築費は上がり、地盤や施工品質も伴う必要があります。「意味ない」と切り捨てず、費用と安全のバランスで判断するのが正解です。
長期優良住宅にするには、耐震等級はいくつ必要ですか?
長期優良住宅の認定では、耐震性の基準として耐震等級2以上(または同等の基準)が求められます。実務では等級3で取得することが多いです。認定の要件・優遇内容は年度で変わるため、計画時点の最新情報でご確認ください。
すでに建っている家の耐震等級は調べられますか?
住宅性能評価書・長期優良住宅の認定通知書・確認申請の構造図書が残っていれば、そこで等級を確認できます。書類が無い古い家は等級が不明なことが多く、その場合は耐震診断で現状の耐震性を別途評価します。「等級3相当まで上げられるか」は既存の状態しだいで大きく変わるため、専門家の診断が必要です。
10数字で確かめた家を建てませんか
耐震等級は、言葉だけなら誰でも「3です」と言えます。でも本当に大事なのは、その等級を、どの計算で確かめ、誰が証明したか。ここまで読んでくださった方は、もう「等級3ですか?」の一問では止まらないはずです。
- 「等級3」は、壁量計算の等級3か、許容応力度計算の等級3か――計算ルートで確からしさが変わる。
- 「等級3」と「等級3相当」は、第三者の性能評価書で証明されているかどうかで、まったく別物。
- そして数字は、大地震のあとも住み続けられる可能性という、暮らしに関わる話。
私たち福井工務店は、奈良県斑鳩町に根を張る地元の工務店として、新築では全棟で許容応力度計算を行い、確認申請と設計住宅性能評価を同じ審査機関で一気通貫で段取りしています。「等級3という結果」だけでなく、「その等級を、力の流れまで追って裏づける」こと。そして、リノベで認定が取れないときは正直に「等級3相当」と言い切ること。煽らず・逃げず・数字で語るのが、私たちの構造への向き合い方です。
まずは「うちは耐震等級、どうすればいい?」のひと言から。
目指す等級の決め方・計算ルートの選び方・性能評価を取るかどうかの判断まで、土地探しや間取りの段階から、数字を見せながら無料でご一緒します。
根拠・出典
本記事は、品確法・住宅性能表示制度・建築基準法・国土交通省資料にもとづく解説です。おもな根拠は以下の通りです。
- 耐震等級・住宅性能表示制度=住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法・平成11年法律第81号)。「構造の安定に関すること」に耐震等級(倒壊等防止・損傷防止)が置かれ、等級2=1.25倍・等級3=1.5倍と定められる。
- 耐震基準(等級1が同等とする最低基準)=建築基準法(昭和25年法律第201号)。
- 2025年(令和7年)4月1日施行の建築基準法・建築物省エネ法の改正=4号特例の縮小(多くの木造2階建てが新2号建築物に再区分/構造・省エネ図書が確認申請の審査対象に/省エネ基準適合義務化)。国土交通省の改正解説による(2026-07時点)。
- 実証データ=国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書、および日本建築学会の益城町悉皆調査(耐震等級3の木造住宅16棟のうち14棟が無被害、2棟が軽微または小破、倒壊・崩壊はゼロ/確認日:2026-07-07)。
- 地震保険の耐震等級割引=等級1=10%/等級2=30%/等級3=50%(損害保険料率算出機構の割引率/確認日:2026-07-07。制度改定がありうるため加入時に最新値を確認)。
- 福井工務店の構造に関する記述(全棟で許容応力度計算を行い設計住宅性能評価で確かめる/制振=Kダンパーの標準採用等)は、自社の実務に基づく。構造計算の実務は一級建築士の統括のもとプレカット専門会社と連携して行う。
(本記事は一般的な解説です。個別の計画で目指せる等級・費用・優遇制度は、計画・土地・年度により異なるため、設計者・所管行政庁・各制度の窓口でご確認ください。性能表記は「評価書で証明した等級」と「計算上の相当」を区別して記載しています。)